婚前調査の費用と流れ|依頼できる範囲・調べてはいけない項目の線引き

婚前調査の費用は20万〜40万円前後が一つの目安で、行動確認か在籍・経歴の確認かで金額が変わります。ただし出身地・国籍・門地などを調べる依頼は受けられません。探偵業法第7条は、調査結果を違法な差別的取扱いに用いない旨の書面を依頼者から受け取るよう事業者に義務づけています。

この記事でわかること

  • 婚前調査で実際に確認できることと、費用が変わる要因
  • 目的別の費用の目安(行動確認・在籍確認・借入状況の確認)
  • 相談から報告書の受領までの5段階の流れ
  • 依頼しても受けられない領域(出身地・国籍・門地など)と、その法的根拠
  • 依頼する前に一度考えたい、相手に知られたときのリスク

公的情報源: 探偵業の業務の適正化に関する法律・e-Gov法令検索法務省「部落差別(同和問題)を解消しましょう」大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例

結論を先に書きます

婚前調査とは、結婚を予定する相手について、既婚歴の有無・勤務先の実在・行動の実態などを事前に確認する調査です。費用は20万〜40万円前後が一つの目安になります。

ただし、この記事でいちばん伝えたいのは金額ではありません。婚前調査には、依頼しても受けられない領域があるという点です。出身地・国籍・門地などを調べる依頼は、法令上その線の外側にあります。

この記事の要点
  • 確認できるのは「事実の裏づけ」:既婚歴・勤務先の実在・行動の実態
  • 費用の目安は20万〜40万円前後(行動調査を含めると上がる)
  • 流れは5段階:相談→見積り→契約→調査→報告
  • 調べられない領域がある:出身地・国籍・門地など(探偵業法第7条・第9条第1項)
  • 地域によっては条例で明確に規制(大阪府条例は違反に罰則を定める)

目次

婚前調査で確認できること

婚前調査は、相手の申告と事実が食い違っていないかを確かめるための調査です。人物を評価するためのものではありません。

探偵業法第2条は探偵業務を「面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その結果を依頼者に報告する業務」と定義しています。婚前調査もこの枠内にあり、手段は他の調査と同じです。

図:婚前調査で確かめられるのは事実の裏づけのみ。属性を調べる依頼は法令上受けられない
図:婚前調査で確かめられるのは事実の裏づけのみ。属性を調べる依頼は法令上受けられない

確認の対象になりやすい項目

依頼として成立しやすいのは、次のような「事実の裏づけ」です。

婚前調査で確認されることが多い項目

確認したいこと調査の手段難易度
独身かどうか(重婚・既婚歴)行動の確認・生活実態の確認
勤務先が実在し在籍しているか在籍の確認・行動の確認低〜中
ほかに交際相手がいないか尾行・張込み
生活が申告どおりか(居住実態)張込み・聞込み
金銭トラブルの兆候があるか生活実態の確認

確認の中心は「申告と事実の一致」です。相手が「独身で、この会社に勤めている」と言っているなら、その2点が事実かを確かめる。この範囲であれば、調査の目的は明確で説明もつきます。

婚活サービス経由の場合は先に確認を

結婚相談所などを介して知り合った場合、独身証明書・在籍証明書といった書類が提出されていることがあります。すでに確認されている項目に費用をかける必要はありません

依頼前に、どこまでが確認済みかを整理してください。それだけで調査範囲が狭まり、費用も下がります。

婚前調査の費用と内訳

費用は、行動を追うかどうかで大きく変わります。書類や在籍の確認だけなら比較的抑えられますが、尾行・張込みを伴う行動調査が入ると跳ね上がります。

婚前調査の費用レンジ(2026年時点の目安)

依頼の内容稼働の目安総額の目安
在籍・居住実態の確認のみ数日(実地は短時間)10万〜20万円
上記+行動確認1日実地4〜6時間20万〜30万円
行動確認を複数日実地10〜15時間30万〜50万円
長期・広域の行動確認実地20時間以上50万円以上

婚前調査が浮気調査より高くなりやすいのは、確認したい項目が複数になりがちだからです。「独身か」「在籍しているか」「他に交際相手はいないか」を全部頼めば、それぞれに稼働が発生します。

図:婚前調査の費用差は「行動を追うかどうか」でほぼ決まる
図:婚前調査の費用差は「行動を追うかどうか」でほぼ決まる

費用を抑える最も確実な方法は、確認したいことを1つか2つに絞ることです。費用の構造そのものは、他の調査と共通しています。

依頼から報告までの流れ

婚前調査の進み方は、他の調査と大きく変わりません。5段階で整理します。

図:婚前調査は5段階で進み、契約時には法定の3書面がそろう
図:婚前調査は5段階で進み、契約時には法定の3書面がそろう

  1. 相談(目的と確認したい項目を伝える)
  2. 見積り(調査員の人数・稼働時間・実費の提示)
  3. 契約(誓約書・重要事項説明書・契約書面)
  4. 調査(在籍確認・行動確認の実施)
  5. 報告(報告書の受領と説明)

相談で聞かれること

相談の場では、なぜ調べたいのかを必ず確認されます。これは事務所が依頼者を疑っているのではなく、法律上の要請です。

探偵業法第9条第1項は、調査結果が犯罪行為や違法な差別的取扱いなど違法な行為に用いられると知ったとき、探偵業務を行ってはならないと定めています。目的の確認は、この判断のために欠かせません。

契約時に交わす3つの書面

婚前調査でも、書面は3点そろいます。

契約時の3書面(探偵業法)

書面根拠条文向き
誓約書第7条依頼者 → 事務所
重要事項説明書第8条第1項事務所 → 依頼者
契約書面第8条第2項事務所 → 依頼者

とくに婚前調査で意味を持つのが誓約書です。第7条は、事業者が依頼者から「調査の結果を犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いない旨を示す書面」の交付を受けなければならないと定めています。

つまり依頼者は、調査結果を差別に使わないと自ら書面で約束することになります。この一枚が、婚前調査の性格をよく表しています。

契約書面の読み方は、次の記事で条文ベースに整理しています。

報告書で受け取れるもの

報告書には、確認できた事実と、確認できなかった事実の両方が書かれます。「不明」という結果も成果です。

「何も出なかった」ことをどう受け止めるかは、依頼前に考えておいてください。疑いが晴れる材料になることもあれば、納得できず追加調査を重ねてしまうこともあります。

依頼しても受けられない調査

ここが本記事で最も重要な部分です。婚前調査という名前で連想されがちな「身元調査」には、法令と人権の観点から明確に線が引かれています

依頼を受けられない調査項目

調査項目受けられない理由
出身地・本籍・居住地が特定の地区かどうか部落差別につながる調査。地域によっては条例で明確に規制
国籍・民族的出自差別的取扱いにつながるおそれ
家系・親族の門地同上
病歴・障害の有無差別的取扱いにつながるおそれ
支持政党・信条・信仰同上

法律・条例がどう定めているか

まず探偵業法です。第7条は依頼者から差別的取扱いに用いない旨の書面を受け取るよう事業者に義務づけ、第9条第1項は違法な目的に用いられると知ったときの業務を禁じています。第6条は、この法律があるからといって他の法令で禁止・制限されている行為ができるようになるものではないと明示しています。

次に部落差別の解消の推進に関する法律(平成28年施行)。法務省は、就職や結婚に際して出身地や家族の状況を調べる身元調査は人権を侵害し、差別につながるおそれがあると説明しています。

さらに地域の条例です。大阪府には「部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」があり、興信所・探偵社業者が、特定の個人やその親族の現在・過去の居住地が同和地区にあるかないかを調査・報告しないことなどを遵守事項として定めています。知事による指示や営業停止命令の規定が置かれ、営業停止命令に違反した場合には三月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金という罰則も定められています。

つまり、この領域は「断られる」のではなく「そもそも法令が禁じている」というのが正確な理解です。応じる業者がいたとしたら、その事務所自体が規制の対象になります。

「相手の家がどんな家か知りたい」は依頼にならない

相談の場で最も答えにくいのが、この種の漠然とした不安です。気持ちとしては理解できても、調査の依頼としては成立しません

代わりにできるのは、具体的な事実の確認に置き換えることです。「独身か」「勤務先は実在するか」「借入で生活が破綻していないか」。事実に落とし込めるなら依頼できますし、落とし込めないなら、それは調査ではなく相手との対話で解くべき問題です。

依頼する前に一度考えること

費用と手続きの話が済んだところで、実務的なリスクにも触れておきます。

相手に知られたときの影響

調査は、相手に気づかれる可能性がゼロではありません。婚前調査を行った事実が発覚して、関係が壊れるケースは現実にあります

結婚を望んでいるのに、その前提を崩しかねない行動を取る。この矛盾を引き受けられるかどうかを、依頼前に一度考えてください。

調査で「安心」は買えない

報告書に何も出なくても、不安がそのまま消えるとは限りません。疑いの気持ちは、事実確認だけでは解けないことがあります。

調査は、具体的な確認事項があるときにこそ効きます。逆に「なんとなく不安」を晴らす目的だと、費用をかけても納得に至らない場合があります。

家族に依頼を勧められている場合

親や親族から調査を勧められて相談に来る方もいます。ただし、本人同士が合意している結婚に周囲が反対する材料を集める調査は、目的そのものを問い直す必要があります

法務省は、本人同士が合意しているにもかかわらず出身を理由に結婚に反対することを、結婚差別の典型として挙げています。誰のために、何を確かめたいのか。そこがあいまいなまま進めない判断も、選択肢の一つです。

よくある質問

婚前調査について、相談の場でよく出る疑問を整理します。

Q1:婚前調査の費用はいくらですか?

在籍や居住実態の確認が中心なら10万〜20万円前後、行動確認を1日加えると20万〜30万円前後が一つの目安です。複数日にわたる行動確認を含めると30万〜50万円、長期・広域になればそれ以上になります。金額は調査員の人数と稼働時間で決まるため、確認したい項目を絞るほど下がります

Q2:婚前調査ではどこまで調べられますか?

調べられるのは申告と事実が一致しているかの確認です。独身かどうか、勤務先が実在し在籍しているか、居住の実態、ほかに交際相手がいないか、といった項目が中心になります。一方で、出身地・国籍・門地・病歴・信条などは調査の対象になりません。

Q3:相手の出身や家柄を調べてもらえますか?

依頼できません。探偵業法第7条は、事業者が依頼者から調査結果を違法な差別的取扱いに用いない旨の書面を受け取るよう義務づけ、第9条第1項は違法な目的に用いられると知った場合の業務を禁じています。大阪府のように、同和地区に関する調査・報告を条例で規制し、違反に罰則を定めている地域もあります。この種の依頼に応じる業者があれば、その事務所を避けてください。

Q4:婚前調査は相手にばれませんか?

絶対にばれないとは言えません。尾行や張込みを伴う以上、気づかれる可能性はゼロにできないのが実際です。調査を行った事実が相手に知られ、関係に影響が出るケースもあります。依頼の前に、その可能性を引き受けられるかを一度考えてください。

Q5:親から調査を勧められています。依頼すべきでしょうか?

まず何を確かめたいのかを具体的な事実に落とせるかを考えてください。「独身か」「勤務先は実在するか」のように事実確認へ置き換えられるなら依頼として成立します。一方で、出身や家柄を理由に結婚へ反対する材料を集める目的であれば、依頼は受けられません。法務省も、本人同士が合意している結婚に出身を理由として反対することを結婚差別の典型として挙げています。

まとめ:確かめられるのは事実だけ

婚前調査を検討するうえでの要点を、最後に整理します。

この記事のまとめ
  • 費用の目安は20万〜40万円前後(行動確認の有無で大きく変動)
  • 流れは5段階:相談→見積り→契約→調査→報告
  • 契約は3書面(誓約書・重要事項説明書・契約書面)
  • 調べられるのは事実の裏づけ(独身か・在籍か・行動の実態)
  • 出身地・国籍・門地などは対象外(探偵業法第7条・第9条、条例による規制)

婚前調査で確かめられるのは、相手が語ったことが事実かどうかだけです。人柄も、家庭環境の善し悪しも、調査で判定できるものではありません。

確認したい事実が具体的にあるなら、範囲を絞って依頼する価値はあります。そうでないなら、費用をかける前に相手と話すほうが早い。この線引きだけは、依頼前に持っておいてください。

事務所を選ぶ際の基本的なチェック項目は、次の記事にまとめています。

※本記事は探偵業法・関係法令および公的機関の公表資料をもとにした一般的な整理であり、個別の事務所の料金・適法性や個別事案の結論を保証するものではありません。掲載した金額は公開されている料金表から読み取れる目安です。規制の内容は地域の条例によって異なります。人権に関する相談は法務省の人権相談窓口へ、契約・料金トラブルは消費生活センター(消費者ホットライン188)へ、法的判断は弁護士など有資格者へご相談ください。

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この記事を書いた人

Kondoです。都内の探偵事務所で8年間、相談の受付や調査報告書の整理、依頼者の方のサポートといった仕事をしてきました。浮気調査から人探し、企業調査まで、200件を超える案件を窓口で見届けてきました。

一番つらかったのは、「もっと早く相談してくれていれば」と感じる場面が多かったことです。費用が想定より何十万円も膨らんでいた方、解約できると思っていたのに違約金を求められた方、証拠を集めたのに弁護士から使えないと言われた方。依頼する前に業者選びのコツを知っていれば防げたケースを、何度も見てきました。

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