探偵事務所との契約で注意すべき条項|法律が定める書面3点と条文ベースの読み方

探偵事務所との契約で交わす書面は3点あります。依頼者が差し入れる誓約書(探偵業法第7条)、契約前に受け取る重要事項説明書(同法第8条第1項・9項目)、契約時に受け取る契約書面(同条第2項・8項目)。この17項目がそろっているかを照合すれば、契約リスクの大半は事前に潰せます。

この記事でわかること

  • 契約で交わす3つの書面と、それぞれの法的な役割
  • 重要事項説明書に必要な9項目(探偵業法第8条第1項)
  • 契約書面に必要な8項目(同条第2項)と、揉めやすい条項
  • 「提携先に回します」が問題になる理由(委託の禁止・第9条第2項)
  • 書面を交付しない事業者に科される罰則(第19条第3号)

公的情報源: 探偵業の業務の適正化に関する法律・e-Gov法令検索警察庁「令和7年中における探偵業の概況」消費者ホットライン188・消費者庁

結論を先に書きます

探偵との契約は、法律が「書面に何を書くか」まで指定している珍しい契約です。だから読み方も決まります。条文が並べた項目と、目の前の書面を1行ずつ照合するだけ。

重要事項説明書に9項目、契約書面に8項目。ここに抜けがあれば、それは交渉の余地ではなく法律上の不備です。指摘して直してもらえばよく、直さない事務所は避ければよい。判断はそれだけシンプルになります。

この記事の要点
  • 書面は3点セット:誓約書(依頼者→事務所)・重要事項説明書・契約書面
  • 説明は「契約前」に書面で(探偵業法第8条第1項=あらかじめ交付して説明)
  • 揉めやすいのは4条項:料金の額、調査の内容と方法、解除、資料の処分
  • 他社への丸投げは違法(第9条第2項=探偵業者以外への委託禁止)
  • 書面不交付には罰則(第19条第3号=30万円以下の罰金)

目次

契約で交わす3つの書面

まず全体像です。探偵業法は、契約の場面で3種類の書面を想定しています。向きと交付時期が違うので、混同しないよう整理しておきます。

図:探偵契約の書面は3点。向きと交付時期が条文で決められている
図:探偵契約の書面は3点。向きと交付時期が条文で決められている

契約時に交わす3つの書面

書面根拠条文誰から誰へいつ
誓約書第7条依頼者 → 事務所契約を締結しようとするとき
重要事項説明書第8条第1項事務所 → 依頼者契約前(あらかじめ)
契約書面第8条第2項事務所 → 依頼者契約締結後、遅滞なく

誓約書は依頼者が差し入れるもの

意外に知られていませんが、誓約書は依頼者が書く側です。探偵業法第7条は、事業者が依頼者から「調査の結果を犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いない旨を示す書面」の交付を受けなければならないと定めています。

つまり誓約書を求められるのは、事務所が法律を守っている証拠です。求められないほうが不自然と考えてください。逆に、依頼者側もこの書面に署名する以上、調査結果を差別や嫌がらせに使わないという前提を引き受けることになります。

説明は「契約前」でなければ意味がない

第8条第1項は「あらかじめ」書面を交付して説明すると定めています。契約書にサインした後で条件を知らされるのは、条文の順序に反します。

「詳しくは契約後に」という進め方をされたら、その時点で立ち止まってください。

重要事項説明書の9項目

ここが照合の中心です。探偵業法第8条第1項は、説明すべき事項を9つ列挙しています。書面と突き合わせてください。

重要事項説明書に記載すべき9項目(探偵業法第8条第1項)

記載事項依頼者が見るポイント
1号商号・名称または氏名、住所、法人は代表者名実在する住所か、名刺と一致するか
2号届出をした公安委員会の名称どの都道府県の公安委員会か
3号個人情報保護法その他の法令を遵守すること記載の有無
4号第10条に規定する事項(秘密の保持等)資料の管理方法まで書かれているか
5号提供できる探偵業務の内容依頼したい内容が含まれているか
6号探偵業務の委託に関する事項委託の有無と範囲
7号対価その他支払う金銭の概算額と支払時期総額の目安と支払うタイミング
8号契約の解除に関する事項解約できる条件と精算方法
9号作成・取得した資料の処分に関する事項調査後の写真やデータの扱い

このうち依頼者が最も注意すべきは、7号・8号・9号です。

7号:概算額と支払時期

金額そのものだけでなく、いつ払うかまで説明義務の対象です。着手金と残金の割合、追加が発生した場合の請求時期を確認してください。

「概算額」なので幅があるのは自然ですが、幅の上端が示されないのは不十分です。上限を書面に落としてもらってください。

8号:契約の解除

途中でやめたくなったときの条件です。すでに稼働した分の精算方法と、解約の申し出をどう伝えるか(書面か口頭か)を確認します。

9号:資料の処分

調査で撮影された写真やデータが、調査後にどう扱われるかです。保管期間・返却の有無・廃棄の方法が書かれているかを見てください。第10条第2項は、資料の不正・不当な利用を防ぐ措置を事業者に義務づけています。

図:説明書は「概算」、契約書面は「確定額」。契約段階で概算のままなら修正を求める
図:説明書は「概算」、契約書面は「確定額」。契約段階で概算のままなら修正を求める

契約書面の8項目

契約を結んだら、事業者は遅滞なく契約内容を明らかにする書面を交付しなければなりません(第8条第2項)。記載事項は8つです。

契約書面に記載すべき8項目(探偵業法第8条第2項)

記載事項依頼者が見るポイント
1号商号・名称または氏名、住所、代表者名説明書と一致しているか
2号契約締結を担当した者の氏名、契約年月日担当者名が空欄でないか
3号調査の内容・期間・方法調査員の人数・稼働時間が特定されているか
4号調査結果の報告の方法および期限いつ、どんな形で受け取れるか
5号委託に関する定めがあるときはその内容委託の有無
6号対価その他支払う金銭の額・支払時期・方法概算でなく確定額になっているか
7号契約の解除に関する定めがあるときはその内容中途解約時の精算
8号資料の処分に関する定めがあるときはその内容データの廃棄・返却

説明書との最大の違いは、6号が「概算額」ではなく「額」になっている点です。契約段階では金額が確定していなければなりません。ここが概算のままなら、指摘して修正を求めてください。

3号「調査の内容・期間・方法」が最重要

トラブルの温床は、ほぼここに集中します。「素行調査一式」のような書き方では、何をどこまでやるのかが確定しません。

3号で確定させておきたい要素

要素曖昧な書き方確定させた書き方
調査員の人数「必要に応じた人数」「3名以内」「調査員2名」
稼働時間「1日」「1日あたり6時間(待機時間を含む)」
調査日「〇月中」「〇月〇日・〇月〇日の2日間」
延長の判断記載なし「延長は依頼者の事前承諾を要する」

とくに「〇名以内」という上限表記には注意してください。人数は費用の中心なので、上限だけでは総額が読めません。費用の構造は次の記事で整理しています。

4号「報告の方法と期限」の落とし穴

報告書の体裁と納品形式は、後の使い道を左右します。弁護士に提出する予定があるなら、写真の解像度や時刻の記録方法まで含めて確認してください。

期限が空欄のまま「調査終了後」となっている契約書は、いつ受け取れるかが不確定です。日数で書いてもらうのが確実です。

他社への委託は原則できない

見落とされがちな条文です。探偵業法第9条第2項は、探偵業者が探偵業務を探偵業者以外の者に委託してはならないと定めています。

つまり「地方の案件は提携先に回します」という説明があった場合、その提携先が届出をした探偵業者かどうかが問題になります。届出のない個人や会社への丸投げは、この規定に反します。

確認の仕方は簡単です。委託の有無と委託先を書面で示してもらうこと。重要事項説明書の6号と契約書面の5号は、まさにこのための記載事項です。

標識の掲示とウェブでの公表

事務所が適法に届出をしているかは、標識で確認できます。探偵業法第12条第2項は、届出をしたことを示す標識を営業所の見やすい場所に掲示することに加え、事業規模が著しく小さい場合などを除き、電気通信回線を通じて公衆の閲覧に供することを事業者に義務づけています。

要するに、ウェブサイト上でも届出の標識を確認できるのが原則です。サイトに届出番号の記載が見当たらない場合は、その理由を尋ねてみてください。

さらに第12条第3項は、探偵業者以外の者がこの標識や類似の標識を掲示することを禁じています。届出番号の表示は、なりすましも含めて規制の対象です。

書面を交付しない事業者への罰則

義務には罰則が伴います。探偵業法第19条第3号は、第8条第1項・第2項に違反して書面を交付しなかった者、記載すべき事項を書かなかった者、虚偽の記載をした者に30万円以下の罰金を定めています。

行政処分の実態も見ておきましょう。警察庁の「令和7年中における探偵業の概況」によれば、令和7年末の届出数は7,354営業所で、同年中の行政処分は営業停止命令0件、指示19件でした。指示の内訳には書面交付違反4件・書面受理違反2件・変更届出書等虚偽4件・実施原則違反2件などが含まれます。

処分件数そのものは母数に比べて多くありません。ただし処分理由が書面まわりに集中しているという事実は、依頼者が見るべき場所を明確に示しています。

図:契約前の30分で17項目を照合すれば、契約後のトラブルの大半は防げる
図:契約前の30分で17項目を照合すれば、契約後のトラブルの大半は防げる

悪質な事務所を入り口ではじく方法は、次の記事で整理しています。

契約前チェックの手順

ここまでの内容を、契約当日に使える順序に並べます。

  1. 標識と届出番号を確認する(第12条)
  2. 重要事項説明書を契約前に受け取り、9項目を照合する(第8条第1項)
  3. 誓約書の趣旨を理解して署名する(第7条)
  4. 契約書面の8項目を照合し、人数・時間・日付・延長条件を確定させる(第8条第2項)
  5. 委託の有無と、資料の処分方法を確認する(第9条第2項・第10条)

所要時間は、落ち着いて読めば30分ほどです。この30分を惜しむと、後で数十万円単位の交渉になります。その場で判断できないなら、書面を持ち帰って構いません。持ち帰りを拒む事務所こそ、避けるべき相手です。

依頼全体の流れは、次の記事で整理しています。

よくある質問

契約の場面でよく出る疑問を整理します。

Q1:探偵との契約で必要な書類は何ですか?

3つあります。依頼者が差し入れる誓約書(探偵業法第7条)、契約前に事務所から交付される重要事項説明書(第8条第1項)、契約後に交付される契約書面(第8条第2項)です。このうち説明書と契約書面は事業者の義務で、交付しない場合は同法第19条第3号により30万円以下の罰金の対象になります。

Q2:契約書に「調査員3名以内」と書かれていました。問題ありますか?

法律上ただちに違反とは言えませんが、依頼者にとっては不利な書き方です。探偵業法第8条第2項第3号は調査の内容・期間・方法を記載するよう求めており、人数は費用と成果を左右する中心的な要素です。「2名」のように数を特定してもらい、増員が必要になる場合の条件と追加額も書面に残してください。

Q3:「地方の調査は提携会社に任せます」と言われました。大丈夫ですか?

提携先が届出をした探偵業者かどうかを確認してください。探偵業法第9条第2項は、探偵業務を探偵業者以外の者に委託することを禁じています。委託がある場合は、重要事項説明書の第6号・契約書面の第5号に内容が記載されているはずなので、委託先を書面で示してもらいましょう。

Q4:調査で撮った写真は調査後どうなりますか?

契約書面の第8号「資料の処分に関する定め」で確認できます。探偵業法第10条第2項は、事業者に対し作成・取得した資料の不正または不当な利用を防ぐ措置を義務づけています。保管期間・返却の有無・廃棄の方法を契約前に書面で確認し、記載がなければ追記を求めてください。

Q5:契約書を持ち帰って検討したいと言っても大丈夫ですか?

問題ありません。むしろ推奨される進め方です。探偵業法第8条第1項は契約前にあらかじめ書面で説明するよう定めており、依頼者が内容を検討する時間を持つことは制度の前提です。持ち帰りを拒む、その場での即決を強く迫るといった対応は、それ自体が危険なサインと考えてください。

まとめ:条文と書面を1行ずつ照合する

契約で確認すべき要点を、最後に整理します。

この記事のまとめ
  • 書面は3点:誓約書(第7条)・重要事項説明書(第8条第1項)・契約書面(第8条第2項)
  • 照合すべきは17項目(説明書9項目+契約書面8項目)
  • 最重要は3号と6号:調査の内容・期間・方法/金銭の額と支払時期
  • 丸投げは違法(第9条第2項=探偵業者以外への委託禁止)
  • 書面不交付には罰則(第19条第3号・30万円以下の罰金)

探偵契約は、書面に書くべき内容が法律で決まっている点が特徴です。だからこそ、感覚ではなく条文で判断できます。手元の書面と条文の項目を1行ずつ照合し、抜けがあれば埋めてもらう。その一手間が、契約後のトラブルをほぼ確実に減らします。

事務所選びの土台となるチェック項目は、次の記事にまとめています。

※本記事は探偵業法および公的機関の公表資料をもとにした一般的な整理であり、個別の契約書の有効性・個別の事務所の適法性・個別事案の結論を保証するものではありません。契約内容の法的評価は個別事情に左右されます。契約・料金トラブルは消費生活センター(消費者ホットライン188)へ、法的判断は弁護士など有資格者へご相談ください。

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この記事を書いた人

Kondoです。都内の探偵事務所で8年間、相談の受付や調査報告書の整理、依頼者の方のサポートといった仕事をしてきました。浮気調査から人探し、企業調査まで、200件を超える案件を窓口で見届けてきました。

一番つらかったのは、「もっと早く相談してくれていれば」と感じる場面が多かったことです。費用が想定より何十万円も膨らんでいた方、解約できると思っていたのに違約金を求められた方、証拠を集めたのに弁護士から使えないと言われた方。依頼する前に業者選びのコツを知っていれば防げたケースを、何度も見てきました。

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