マッチングアプリで既婚者だった相手との関係で慰謝料が発生するかは、あなたの立場と「相手が既婚と知っていたか」で結論が変わります。独身と偽られた側は貞操権の侵害として50万〜200万円程度を請求できる場合があり、既婚を隠して利用した側は配偶者と交際相手の双方から請求されるおそれがあります(事案による目安)。
この記事でわかること
- マッチングアプリの既婚者と慰謝料は「独身側・配偶者側・既婚側」の3つの立場で結論が変わる
- 既婚者のアプリ利用自体は違法ではないが、独身と偽って相手を騙す行為は不法行為になりうる
- 慰謝料の成立は肉体関係・故意/過失・婚姻の平和の侵害・時効の4点で判定する
- 独身と偽られた側は貞操権侵害で50万〜200万円程度を請求できる場合がある(事案による)
- 既婚を隠した側は配偶者と騙した相手の双方から請求される二重リスクを負う
参考にした法令: e-Gov 法令検索「民法」第709条・第710条・第724条・第770条(参照)。2026年7月時点の条文をもとに整理しています。個別の判断は弁護士にご相談ください。
マッチングアプリで既婚者だった場合の慰謝料はどうなるか
先に結論です。マッチングアプリで既婚者だった相手をめぐる慰謝料は、「あなたがどの立場か」と「相手が既婚と知っていたか」の2点で結論が大きく変わります。ひとくくりに「請求できる/できない」とは言えません。
相談を受けていた現場でも、同じ「アプリで既婚者だった」でも立場が違えば結論は正反対になる、という誤解が多くありました。まず自分の立場を切り分けるところから始めます。
まず「自分がどの立場か」を3つに分ける
立場は、大きく次の3つに分かれます。ここを取り違えると、請求できるはずが請求される側と勘違いする、といったことが起きます。
まず自分がどの立場に当てはまるかを、次の3系統で切り分けてください。

- 独身側:あなたは独身で、相手に独身と偽られて関係を持った(被害を受けた側)
- 配偶者側:あなたの配偶者がアプリで不倫していた(配偶者として請求する側)
- 既婚側:あなたが既婚で、独身と偽ってアプリを利用した(請求される側)
立場が定まると、次に見るべき論点が決まります。独身側なら「相手(既婚者)へ請求できるか」、配偶者側なら「不倫相手と配偶者へ請求できるか」、既婚側なら「誰から・いくら請求されるか」です。
既婚者のマッチングアプリ利用は違法か
既婚者のマッチングアプリ利用とは、法律上「それ自体を直接禁止する規定がない行為」です。つまり、既婚者がアプリに登録・利用すること自体は違法ではありません。
先に結論です。違法かどうかの分かれ目は、「独身と偽って相手を騙したか」にあります。利用そのものではなく、独身と装って関係を持った点が不法行為(民法709条)と評価されうる、という整理です。
「違法ではない」ことと「責任を負う」ことは別
ここは混同されがちなので、分けて理解します。刑事的に処罰される「違法」と、民事で慰謝料を負う「不法行為」は別の話です。
- アプリ利用自体:既婚者が使っても、直ちに罪に問われるわけではない
- 独身と偽る行為:相手を誤信させて関係を持てば、民事上の不法行為として慰謝料の対象になりうる
- 利用規約違反:独身証明書の提出を求めるアプリで既婚を偽れば、規約違反として運営への通報対象になる
独身証明書の提出が必要なアプリで既婚を偽っていた場合は、運営会社への通報も選択肢です。ブロックする前に、やり取りのスクリーンショットやプロフィールを保存しておくと、後の話し合いや請求で役立ちます。
慰謝料が成立する条件・しない条件
先に結論です。慰謝料が成立するかは、「肉体関係・故意/過失・婚姻の平和の侵害・時効」の4点を順に確認すると判断しやすくなります。どれか1つでも欠けると、成立しない、または減額される可能性があります。
不貞行為を理由とする慰謝料は、民法709条(不法行為による損害賠償)と710条(精神的損害の賠償)が根拠です。裁判上の離婚事由としての「不貞な行為」も民法770条に定められています(e-Gov 法令検索・民法・2026年7月時点)。
慰謝料が成立するかどうかは、次の順で確認していくと整理できます。

- 肉体関係の有無:不貞行為は原則として肉体関係を指す。デートや連絡だけでは認められにくい
- 故意・過失:相手が既婚と知っていた、または知り得たか。独身と信じたことに落ち度がなければ、独身側への請求は認められにくい
- 婚姻の平和の侵害:配偶者側が請求する場合、関係を持った時点で婚姻が破綻していなかったか
- 時効:民法724条では、損害および加害者を知った時から3年(不法行為の時から20年)で請求権が消滅する
出典: e-Gov 法令検索「民法」第709条・第710条・第724条・第770条(2020年改正民法・参照)。成立の可否・金額は個別事情で変わるため、確定的な判断は弁護士にご確認ください。
独身側の請求が「認められにくい」ケース
独身と偽られた側が、逆に相手の配偶者から慰謝料を請求されることがあります。この場合の結論は、「あなたが既婚と知っていたか・知り得たか」で決まります。
独身と信じたことに落ち度がない(プロフィールが独身表示で、既婚をうかがわせる事情もなかった)なら、故意・過失が認められず、配偶者からの請求は原則として認められにくいとされています。逆に、既婚と知りながら関係を続けていた場合は、独身側であっても責任を問われる可能性があります。
独身と偽られた側が請求できる慰謝料と相場
先に結論です。独身と偽られて関係を持った側は、独身と装った相手(既婚者)に対して「貞操権の侵害」を理由に慰謝料を請求できる場合があります。目安は50万〜200万円程度とされますが、事案によって幅があります(2026年7月時点の一般的な傾向)。
貞操権の侵害とは、既婚であることを隠して独身だと誤信させ、性的関係を持つことです。相手の人格的な利益を侵害したと評価される考え方だと理解してください。
「独身と表示してアプリで出会っていた」といった事情があると、貞操権の侵害が認められやすいとされる裁判例があります(断定はできず、事案ごとの判断です)。
独身と偽られた側と、配偶者側とでは、請求の根拠も相場感も次のように変わります。

立場で変わる慰謝料の目安(2026年7月時点・事案による)
| 立場 | 請求の根拠 | 金額の目安 | 主な争点 |
|---|---|---|---|
| 独身側→既婚者へ | 貞操権の侵害(独身と偽った不法行為) | 50万〜200万円程度 | 既婚を知らず落ち度がなかったか |
| 配偶者→不倫相手・配偶者へ | 不貞行為(民法709・710条) | 数十万〜300万円程度 | 肉体関係と婚姻の平和の侵害 |
表のとおり、同じ「アプリで既婚者だった」でも、根拠となる権利が違うため相場感も変わります。金額はあくまで目安で、婚姻期間・破綻の有無・子の有無・関係の期間などで増減します。配偶者間の不倫慰謝料の相場は不倫の慰謝料相場と請求方法で詳しく整理しています。
既婚者側・配偶者側が請求される立場と二重リスク
先に結論です。既婚を隠してアプリを利用した側は、「配偶者」と「独身と偽って騙した相手」の双方から慰謝料を請求される二重リスクを負います。請求される側ほど、この全体像を把握しておく必要があります。
具体的には、次のような二方向の請求が起こりえます。
- 配偶者から:不貞行為を理由に、慰謝料と離婚(民法770条の離婚事由)を求められる
- 騙した相手から:独身と偽った点について、貞操権の侵害を理由に慰謝料を求められる
求償権(払った後に取り戻せる場合がある)
不倫の慰謝料は、原則として不倫をした2人(既婚者本人と交際相手)が連帯して責任を負うと考えられています。そのため、交際相手が慰謝料を全額支払った場合、後から既婚者本人に対して負担割合に応じた分を請求できることがあります。これを求償権といいます。
「独身と偽られた側が、まず配偶者に払わされ、その後に既婚者本人へ求償する」という流れになることもあります。誰が最終的にいくら負担するのかは、故意・過失の程度や事情によって変わるため、金額の見通しは弁護士に確認するのが確実です。
慰謝料の請求・被請求で証拠を集める進め方
先に結論です。慰謝料を請求する場合も請求される場合も、「証拠の確保 → 通知 → 示談/調停 → 訴訟」という順で進みます。特に証拠は、合法な方法で集めたものでなければ後の手続きで使いにくくなる点が要注意です。
請求する側・される側のどちらも、進め方の大枠は次のように整理できます。

各段階では、次の点を押さえておきます。
- 証拠を確保:アプリのやり取り(独身と偽った記録)、プロフィール、関係を示す記録などを保存する
- 相手に通知:話し合い、またはまとまらなければ内容証明郵便で請求の意思を明確にする
- 示談か調停へ:金額・支払い方法・口外禁止などの条件を書面(示談書)にまとめる
- 訴訟で判断:話し合いで解決しない場合は、裁判所での判断を求める
証拠は「合法に集める」──ここを外すと逆効果
証拠を集めたい一心で、相手のアプリに無断でログインする・自力で身元を特定する・車にGPSを無断で取り付けるといった行為に踏み込むのは避けてください。これらは不正アクセスやプライバシー侵害など、あなた自身が違法・不法行為の責任を負うリスクがあります。
配偶者のアプリ不倫が疑わしく、証拠を確実に押さえたい場合は、探偵業法の範囲で調査する正規の事務所に相談するのが安全です。調査にかかる費用の目安は浮気調査の費用相場で、事務所の選び方は探偵事務所のおすすめ比較で整理しています。最終的な請求可否や金額の見通しは、弁護士への相談で確定させてください。
よくある質問(FAQ)
Q1:マッチングアプリで既婚者だった場合、慰謝料は請求できますか?
あなたが独身で、相手に独身と偽られて関係を持った場合を考えます。この場合は貞操権の侵害を理由に相手(既婚者)へ慰謝料を請求できる場合があります。目安は50万〜200万円程度とされますが、事案によって幅があります。一方、相手が既婚と知って関係を続けていた場合は請求が難しくなります。個別の可否は弁護士にご確認ください。
Q2:既婚者がマッチングアプリを使うのは違法ですか?
既婚者がアプリを利用すること自体は違法ではありません。ただし、独身と偽って相手を誤信させ関係を持つ行為は、民法709条の不法行為として慰謝料の対象になりえます。独身証明書の提出を求めるアプリで既婚を偽った場合は、利用規約違反として運営会社への通報対象にもなります。
Q3:相手が既婚者だと知らなかった側も、配偶者から慰謝料を請求されますか?
独身と信じたことに落ち度がなければ、故意・過失が認められず、配偶者からの請求は原則として認められにくいとされています。プロフィールが独身表示で、既婚をうかがわせる事情もなかったかどうかが判断の分かれ目です。既婚と知りながら関係を続けた場合は、責任を問われる可能性があります。
Q4:慰謝料の請求に時効はありますか?
はい。民法724条では、損害および加害者を知った時から3年(不法行為の時から20年)で請求権が消滅するとされています(e-Gov 法令検索・民法・2026年7月時点)。既婚だと分かってから時間が経っている場合は、早めに弁護士へ相談し、時効の状況を確認することをおすすめします。
Q5:慰謝料請求に必要な証拠はどう集めればいいですか?
独身と偽ったやり取り・プロフィール・関係を示す記録などを合法な方法で保存します。ブロックや削除の前にスクリーンショットを残すのが基本です。相手のアプリへの無断ログインや自力の身元特定は、あなた自身が違法行為の責任を負うおそれがあるため避け、確実な裏取りが必要なら探偵業法の範囲で調査する正規の事務所に相談してください。
まとめ|立場と「既婚を知っていたか」で結論が変わる
- マッチングアプリの既婚者と慰謝料は独身側・配偶者側・既婚側の3つの立場で結論が変わる
- 既婚者のアプリ利用自体は違法ではないが、独身と偽る行為は不法行為になりうる
- 成立は肉体関係・故意/過失・婚姻の平和の侵害・時効(3年)の4点で判定する
- 独身と偽られた側は貞操権侵害で50万〜200万円程度を請求できる場合がある(事案による)
- 証拠は合法に集める。無断ログイン等は避け、裏取りは正規調査・請求判断は弁護士へ
マッチングアプリで既婚者だったとき、慰謝料の結論を決めるのは「自分がどの立場か」と「相手が既婚と知っていたか」です。まず立場を切り分け、成立の4点を確認し、証拠を合法に保存する。この順番が、請求する側でも請求される側でも遠回りを避ける進め方です。
金額の見通しや請求の可否は、事情によって大きく変わります。配偶者のアプリ不倫が疑わしいなら証拠を正規の調査で押さえ、慰謝料や離婚の判断は弁護士に相談して確定させてください。
免責事項
※本記事は民法などの公開情報を整理した一般的な参考情報であり、特定の結論や金額を保証するものではありません。記載の相場・要件は2026年7月時点の一般的な傾向で、慰謝料の可否・金額は個別の事情により異なります。慰謝料請求・離婚などの法的判断は弁護士に、契約・消費者トラブルは消費生活センターにご相談ください。

